阿部さん(静岡県)のトマトハウスの土壌は、クロルピクリン消毒を行った圃場の土壌よりも多様な微生物が多く存在していることが確認できました。
圃場の土壌の生物性(微生物や小動物の種類、数、バランス)が健全であるか否かを調べることは重要です。そこで、3種類の土壌における微生物群集の有機物分解活性の多様性と高さを数値化する分析試験を行いました。
土壌中に生息している微生物全体の能力を、有機物分解活性の多様性と高さで数値化し、この数値を基準にして土壌の生物性を客観的に評価します。
分析試験を依頼したのは、DGCテクノロジー社。15年間に渡り、土壌微生物の多様性と活性の研究を行っており、土壌の生物性を数値化する世界唯一の技術を持っています。このDGCテクノロジー社によると、次のような結果が出ているようです。
「土壌病害が発生しにくい土壌は、微生物が多様で、活性値が高い」
試験方法
NASAの技術を応用した95種類の異なった有機物(糖類や有機酸、アミノ酸、アルコール、アミンなどの基質)を入れた試験プレートを使用します。このプレートに土壌の抽出液を入れ、それぞれの基質が抽出液に含まれる微生物の作り出した酵素によって分解されると赤く反応します。
・基質がより多く分解されると、赤色が濃くなります。
→ 分解活性が高い
→ 酵素の量が多い
→ その酵素を作り出す微生物の数が多い
・分解される基質の種類が多いほど、赤く反応したスポットの数が多くなります。
→ 酵素の種類が多い
→ 微生物の種類が多い
分析の結果
善玉菌を使った太陽熱土壌処理を行った阿部さんの圃場の生物多様性・活性は、クロルピクリン消毒を行った圃場の土よりも多くの基質を分解していることから、多様な微生物が多く存在していることが確認できました。
一方で、長年、化学肥料を使用せず、減農薬栽培を行っている果樹園の土壌は、阿部さんの圃場よりもさらに基質の分解活性が高く、微生物の活性が高いがことがわかりました。
これは阿部さんがクロルピクリン消毒をやめて、善玉菌を使用した太陽熱土壌処理に切り替えて3年目の土壌の分析結果になります。この時点で、阿部さんは化学肥料と農薬を使用した栽培を行っており、トマトの青枯病の発生が3年連続で3,600本中10本以下(9月〜12月の期間)という低い発生率で推移していました。
青枯病が多発していた頃の阿部さんの圃場の土壌微生物の測定結果はありませんが、青枯病の発生率の変化から推測できることは、圃場の土壌微生物の多様性が改善されたと言えます。しかし、まだ活性度はそれほど高くはないため、今後も安定生産を続けるためには、より土壌微生物の活性を高めていくことが必要であることもわかりました。
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